2010/12/12

Tony and Susan

Tony and Susan.
Titleだけだとハーレクイン的なロマンス小説。
だけどamazonでorderしたのが届いてみると,おどろおどろしい書体にわざとcoffeeのこぼしジミの付いたようなカバーデザインの,どちらかというとSteven King的な雰囲気。しかも紙自体が全部古くさく黄ばんでいた。あれはそのような演出なのか単に中古品が届いたのか区別できず。

しかし超thrilling!
原著にしては珍しく早いpaceで一気に読んだ。
実際に起こっている出来事と主人公達の頭の中の考えなどをquotation markなどで区別も付けず続けて書き連ねているところも多いので,ちょっと文体に慣れる必要があったのだけれど。

面白かったなあ。
主人公は40過ぎの専業主婦。ある日,離婚した前夫から彼が書いたという小説の原稿が送られてくる。彼との再会を前にその原稿を読み始めたはいいものの,そのthrillingな内容に惹き込まれ,また自分の離婚・再婚後といった人生に照らし合わせて深く影響を受ける,といった物語。

小説の中の小説はTony Hastingsという名の数学教授が,恒例の家族との夏旅行の際に巻き込まれたincidentにより妻と娘を惨殺され,その後一変した生活の中で警察や犯人などとのやり取りの際の葛藤などを克明に描いたもの。
殺人事件に巻き込まれるなどということは非日常的だけれど,実際自分の身に起こったら私も同じような考え,態度をとるのではないか,そもそもこのような悲劇に巻き込まれる事は普通にあり得るのではないか,と考えさせられます。

また,読む側の主人公であるSusanにしても,彼女の恋愛のやり取り,不倫までの経過,結婚・職業両方における自分の社会的な立場,他人から張り合いや腹いせに対する理解など,その心理描写が面白い。
国が違っても人生観などは多々共感できる部分があるものなんだなあ,と感じ,あぁ〜,分かる,分かるぅ,といった感じでした。

Memo的にいくつか抜粋。
"Tony trying to brace himself by being civilized. The notion that being civilized conceals a great weakness."
"She wishes she didn't have to keep proving that it's her ability to read that makes her civilized."
"Dissemination:the adaptations and publicity required to induce others to read - an extensive process summed up in one word, publication." "In giving up publication she gave up the chance to be part of a writing conversation, to read the consequences of her words in other words from out in the world."
"Not that he had not yet grown up to appreciate such joys but that he had grown out of them as a natural part of the process of maturation."

しかし著者のAustin Wrightはもう亡くなっちゃったけど,この小説書いた時は70過ぎだったのね。

2 件のコメント:

akany さんのコメント...

最近なかなか面白いものに出会えず.
しかし原著か・・・
早く先を読みたい!!という面白さであれば頑張れるかな?早速購入してみよう.
Marleeのはとっても参考になる.またお薦めがあったら紹介してね!

marlee さんのコメント...

>Dear Akany!

うん,面白かったのよー。

女性の観点からの,日常生活の些細な(または些細ではなくても)出来事への妥協の仕方の考え方とか,モラル的・社会的に受け入れられる観念・受け入れられない観念への共感部分とかね。

小説の中の小説のendingについても,現実だったら実際こういう終わり方が本当かもなーって。

しかしこんなthrilling小説の後には,吉田戦車の「吉田自転車」などゆる〜いものを電車の中でブックカバーも付けずに読んでます。