2014/10/04

君が僕の息子について教えてくれたこと

久しぶりに、あ〜、いい番組みたなあ、と思える番組に出会った。
たまたまテレビをつけたらやっていた再放送分だったけれど、今年の8月に放送されたものらしい。
NHKの「君が僕の息子について教えてくれたこと」
NHKのよさ、実力というものを久しぶりに再認識した番組。愚にもつかぬバラエティ番組ばかりあふれている中で、NHKももっと頑張ってこういう番組をどんどん作ってほしい。

Irelandの作家David Mitchell氏が上手に日本語を話すところから番組は始まる。
あれ、この人どうして日本語が話せるんだろう、と番組内容も分からず観ていたらすぐに引き込まれた。
Mitchellさんには自閉症の息子がいる。その息子への対応、コミュニケーションの難しさに悩み、息子に対してイライラすることもあったという。
そんな中で1冊の本に出会う。
自身も重度の自閉症である東田直樹による「自閉症の僕が跳びはねる理由」

自閉症は先天的な脳の機能障害であり、環境などによるものではない、ということすら今回初めて知ったわけだけれど、この障害のために認知やコミュニケーションが困難となる。そのため、自閉症児が自分の考えを人に伝えるのは通常難しいけれど、東田さんの場合は親や周りの協力もあって、努力の末、考えていることを 、ひらがなを羅列したボード版のようなものを使って指差しながら表すことが可能となった。ボード版の方が伝えやすいらしいのだけど、PCも使うことができるから、それらを使って13歳のときに東田さんが出したのがこの本。
自閉症児についての「どうしていきなり奇声をあげたりするの?」「どうしていきなり飛び跳ねたりするの?」といった聞きにくい質問などに対して、彼なりの率直な答えを述べてくれている。

日本で英語教師をしたこともあるMitchellさんは幸いにも日本語が読め(どうやら奥さんも日本人のよう)、この本を読んで、初めて自分の息子が東田さんの言葉を借りて自分に話しかけてくれた気がすると言っている。Godsendの本だとも。

これは広く世に知られるべき本として、翻訳版を出すことを決意し、翻訳家の奥さんとともに"The Reason I Jump"を出版。NewYorkTimesでもbestsellerになっているみたい。

番組では20歳になった東田さんとMitchellさんが日本で対面を果たし、また重度自閉症者には困難きわまりない空の長旅も耐えて、東田さんがNYで講演する様子も描かれている。 
東田さんはMitchellさんとの対面をすごく楽しみにしていたに関わらず、部屋に入った途端、Mitchellさんの方も見ず窓の方に駆け寄りずっと窓の外を眺めたまま。
しかしこれもMitchellさんは穏やかな顔で見守り、ひたすら待つ。息子で慣れているのもあるけれど、こういうのも、本のおかげで自閉症の人の気持ちが分かりやすくなり、ずっとpatientになれるという。
Mitchellさんがずっと聞きたかった質問の一つに「自閉症の息子に対して父親としてすべきこと、してほしいことは何か」がある。それに対して東田さんはたどたどしく、「そのままでいい」と答える。
東田さんの場合は、自分が自閉症でも、親がそのせいで犠牲になっている、ということを感じさせなかったのが有り難いと。
本の中でも、自分が自閉症により苦しむのは乗り越えられるが、それにより周りが苦しんでいる様子をみるのは耐えられない、と述べていた。

自閉症の子供をもつ様々な親の葛藤なども取り扱いながら、自閉症に対する誤解も減らせる番組。
周りに自閉症の人はいないけれど、理解を深めるために本を読みたくなった。
オリジナルの方でもいいけれど、Mitchellさんのintroductionを読みたいこともあり、また東田さん作の短編も最後についてくるようなので、The Reason I Jumpを購入。

60近い質問に対して分かりやすい言葉で答えが述べられている。
何度も同じことを繰り返し言ってしまうのも、すぐ聞いたことを忘れてしまう、というのもあるようだけど、口に馴染んでいる言いやすいフレーズをいいながらそのサウンドを楽しんでいる、というのもあるよう。
確かに相手の考えを推し量ることができると、接するこちらの態度も変わってこれるのかもしれません。
Mitchellさんの、emotional poverty and an aversion to company are not symptoms of autism but consequences of autismというのが印象的。

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